1、DXとは
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略ですが、海外で唱えらたITありきの言い方がどうしても気にいらない。納得できないのです。デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルを革新し、企業の競争力を高める取り組みですと説明されていますが、デジタル化の前にやるべきことが多くあると思います。
経営層の皆さんは、後ろのトランスフォーメーションに関心があります。
トランスフォーメーションのために、取り組みの1つの手段としてITがあるという気持ちであろうと思います。
それに対して、デジタル技術を使って、トランスフォーメーションをすることを考えなさいと言われても、目的の前に手段を限定している言い方であるため他に本質的な対策はないのかとの意見が出るのは当然であると思います。
2、ITは手段
ITは手段です。その前に、何を解決したいのかの仕事の問題があるはずです。
もし、ITを使うのを目的にするなら、それは製造業では通用しないのではないでしょうか?
製造業は長年、設備投資を行なってのハードの資産を保有しています。ITを使うのを目的にすると、
IoTのような発想になり、設備から情報を吸い上げ、何らかの解決に利用できないかと考えるようになります。
しかし、実際には逆で、現状の生産における問題意識が先にあり、その問題を解決するために要因を見つけ対策すると考えると思います。その段階にてITを用いる順番になります。こうなるとDXではなく変革、革新という言葉だけで十分ではないでしょうか。
世の中に2025の崖とかDXを推進する脅迫めいた掛け声は、もう完全に論理性を維持できていないのです。
デジタルを用いて新規事業を考えるという命題は特段の問題はないです。スタートアップならそれはありですが、スタートアップがものづくりのために設備投資を行うということはなかなかの難問だと思います。目利きのできる投資家が長い目で付き合ってくれれば良いですが、日本ではそのようなケースは少ないと思います。
3、製造業の変革を行う時に考えるべきこと
では既存の製造業でデジタルを用いて革新をする場合にどんなことが問題になるかを考えてみようと思います。
まず、デジタルで生産性向上を図れて、投資に対して効果が出るかです。DXだからという掛け声だけにのって、IT投資をしてはお金をドブに捨てるようなものです。
そして、デジタルで業務革新ができるかです。業務プロセスを単純化し、仕事のスピードが向上できる着眼点を見つけることができることが大切です。残念ながらITを外部依存している企業には難しい企画だと思います。
この点においては、例えば、1000人規模の製造業であると、管理間接員は10%くらいです。10%のホワイトカラーが多くの種類の仕事を一人でやっていることが多いと思います。それは、営業が部品の調達は間に合いそうかと確認したり、生産は納期に間に合うかを調整するなど、1万人の企業なら営業、生産管理、調達と必ず組織が作られ人による分担が行われていますことを一人で行うこともあります。
1000人と1万人の生産管理のシステム化要件は当然異なってきます。1000人の企業では営業や調達機能が簡素ではあるが一つのシステムであれば嬉しいはずです。1万人の企業では、営業、調達のシステムが存在しているとして、生産管理システムはこれらの複数の既存システムとの連携を要求すると思います。
このようにどんな企業でも使える、どんな業務でも使えるシステムを企画設計できなければ、日本の中の製造業には大きな革新を起こすITシステムは進んでいかないのではと思います。
これまで、超大企業の製造業は、その保有する独自開発したシステムを外販していないと思います。どちらかと言えば、そのシステムが競争力の源泉だという扱いで外部には紹介されることが少ないと思います。
4、製造業の共通課題に着目すべき
このような現状を考えると、製造業のITシステムはそれぞれの企業で独自に開発するしかなく、超大企業、大企業、中小企業では別々なニーズによる要件が決定されていることになります。
これは、大変お金がかかるし、日本としては勿体無いことだと思います。
本来、製造業のDXを推進す機関は、このような共通のインフラシステムを開発して世の中に展開すべきだと思います。
システムの開発側にはもっと大きな問題があります。それは、情報システムに許されることとしてバグという言葉が浸透しています。製造業の製品は品質第一で、不良は許されないという感性で日本のものづくりはコントロールされてきました。
情報システムになるとバグです、仕様ですという開き直りの発言がSIerから聞こえてくるのは残念でありません。システム開発倫理を高めて欲しいものです。そうでなければ、そのシステムを用いて製造した製品の信頼性は大いに怪しさを感じることになります。バグはソフトウエアの不良です。不良を持つ商品を販売してはいけません。ソフトだからすぐにOTAで治せるという言い訳は問題の処置だけに視点がいき、未然防止の思考が働いていません。
自動車の自動運転技術は、このような心配を払拭できていないと思います。万が一、日本の道路で、自動運転車が人を跳ねたとした場合、製造責任はどのように問われることになるのでしょうか?
製造業は人によりものを作る業態です。人が作業するので、その作業ミスをどのように無くすかという点を細かい点まで標準化し、日常の管理が行われています。
ITの開発企業もソフトウエアというものを作るので製造業です。にもかかわらず、バグ、バージョンアップというお客様への迷惑を忘れているならば、日本の道路で自動運転車は利用が拡大しないのではないかと思います。
今回は製造業のDXを進めるにあたり、ITソフトウエア開発とものづくりの感性の違いをお話ししました。