DXの前に行うべきことはファイル管理である。

ファイルは見つからないのは大問題

これまで、ファイルが見つからない、探せないという問題が大きいということを述べてきた。もう一つは、ファイルの記載内容は正しいのかという問題もある。過去のその時は、その内容で良かったが、現在はちょっと状況が異なっているということもある。しかし、それでも過去のファイルを見たいという欲求は変わらずにある。ファイルは見つからなければいけないものだと思う。

ファイル名と内容の一致性が保証されていない

人はどんなに年齢や経験を経ても、まだまだ知らないことがあるものである。企業の中では、なおさら、知識は共有されなければならない。
 ファイルの名前やホルダー名称からは、その中に記録された知識がどのようなことに関するものかは読み取れない。

これは例えば、1から5の数字が書かれた5枚のトランプカードが目の前にあるとしよう。数を数えられない幼児には、見た目の違いしか区別ができない。年上の子は、順番の数字であると理解する。このような順番の知識が隠れている。

ホルダー階層の区分が理解しにくい。普遍性をもっていないからである。


 ホルダー階層やファイル名を人が見た時は、幼児がこのようなトランプカードを見たことと大差はないのである。ある事の説明のためには、そのことが理解させるようなストーリーとしての説明文が別に必要である。しかし、分かっている自分がわざわざ他の人のために説明ストーリーを記述することはしない。もしも記述してくれたならば、このストーリーはその人の知識をベースに説明したストーリーとなる。ゆえに他者にはストーリーが一部分、理解できないこともある。そのような場合は、その箇所を人に質問し、理解することになる。

システムに期待していること

それは、ある人の仕事の結論を、その理由をグラフや表や文書や絵を用いて説明することが手間なく行える必要がある。人が頭の中で作ったストーリーが結論を書いた文書に関係して手間なく作られると良いのである。


 そして、それを共有し、分からない人の質問と回答を自由にこ記述できるようにすることで、説明のストーリーが膨らみのある全体的な知識にすることができるのである。人の思考プロセスの記述をすることで、知識の記録が実現できているということである。

読み手が書き手と同じ理解ができること

他の人が作成した一つファイルとして独立した文書は自分が思考していることとは異なるものである。そのためにベースとなる知識が共有されなければ納得できないことになる。この理解度の差は、企業における意思決定に大きな問題である。理解の差を埋めるために、また別な資料を作る無駄をしている。知識の不足した管理者による正しくない結論になってしまうこともある。

CKWEB2が実現している便利さについて


 これを防ぐには、デジタル化された情報に対して、簡単な工夫をすれば良い。それは、表や絵やグラフや数字や文書など、いろいろなアプリで、いろいろな拡張子でも見ている目は画像になり同じフォーマットである。したがって、全ての文書はイメージデータに変換し、原本との区別と改竄を避けつつ、ckweb2 による特徴点記録法を用いることで解決できるようになる。


 帳票、フォーマット、形式ということを考えないことが必要だ。人の思考に元々は存在しないことであり、創造性の邪魔になるように思えてならない。紙に自由記述しながら、仕事ができるようにならないものかと考えたのである。

生産管理の要諦はものと人の座標と時刻をIoTで捉えることから始まる

ものや人の位置座標をIoTで取得すればDXは進んでいく

弊社の特徴点記述法は空間座標にデータを記録する方法である。写真や文書などの用紙サイズの中での座標値は例えば、用紙の左上の角をx,yの座標原点としている。これは、その用紙におけるローカル座標である。この紙が一旦、部屋の中のどこかに貼られた場合は、その部屋の座標空間内にの空間座標として紙の位置関係はワールド座標として決定されることになる。
 私達の居る場所もGPSから緯度経度をもって特定できるように、ものについても例えばRFIDタグが付いていれば位置情報を取得できるようになってきた。ものの存在位置が地図の上で表示できるようになると、次に期待できることが増えてくる。

生産管理にはものと人がどこにいついるべきかの計画がなされていることが必要

 それは、ものともの、ものと人との複数の組み合わせが、ある座標にある時刻に存在したことから、何が起こっているのか、起ころうとしているのかの予測ができるようになる。ものや人のそれぞれは、計画をもって移動するのであるならば、その状態が計画通りであるのか、遅れや進み具合の状態判別も行うことができるようになる。もの存在が得られると、次に、そのもの自身から情報を得たくなる。ものを見ると、それに関する情報がどこにいても取得できるようになる。生産管理システムにはこのような計画情報を保有していないことが多くある。

計画と実績の違いを要因とともに記録することが必要。

 ものづくりにおいて、在庫管理は大事な業務である。ものは、人の手がなければ絶対に移動することはない。しかし、材料や仕掛品は、どんなに置場を定めても、置き場に標準在庫以上に置かれてしまうことがある。在庫数は見れば分かるのであるが、知りたいことは何故、この置き場にこれだけの在庫が置かれているかの理由である。置かれている理由には、今日中に次の加工に運搬される予定、材料欠品で仕掛品のまま、1日以上放置されているもの、加工不良で手直しを必要とするもの、などである。この理由毎の数の推移がわかれば、今、生産工程はどのようになっているかをネットワークを介して知ることができる。ものは、自ら、理由を語らないので、現場がこれらの情報をRFIDへ記録をすることで、加工の流れの中の状態が、人に聞くことなく把握できるようにできる。これは、ものの位置情報がものの固有番号単位に把握でき、そのものの計画情報と比較することで、更に、今後の計画を再編成することができる。

 生産管理は、ものと人の位置座標と時刻を用いることで、計画と実績と予定を掴めることができる。

 空間座標にある文書や仮想モデル(3次元モデル)も、ものとして扱うことで、目で見ている空間内にある文書やものや人から、名前だけではなく、欲しい情報が取得できるようになる。ものと同じく、座標と作成時刻によって文書内の情報は、より細かく、経過的な背景思考を取得できるようになる。

ものと人の座標管理によるサプライチェーンデータ管理について

弊社の特許文書を参考にしてください。

製造業のデジタルトランスフォーメーションに必要なこと。それは思考や議論のプロセスのデジタル化に尽きる。

DXのデータ連携はデータ粒度まで精査できていなければ無駄な工数を生み出すだけ

情報システムを開発していると、そのシステムで利用されるデータの項目名称は重要となる。データの項目名称について、データのタイプや桁数などを定義することになる。そしてデータの項目名称同士の関係性を決めることが必要になる。多くの情報システムは、ある特定の分野を対象とする機能として開発され利用されている。その結果、企業内には、多くのシステムが構築され、今日まで、システム間のデータ連携をいかにして実現するかに大変な苦労をしている。
 さて、このようなシステム連携は基本的に可能なのであろうか?実際には、連携と言っても、どうしても自動処理ができずに、人の判断で処理を加えてから、別なシステムにデータをインポートするようなことが行われているのではないだろうか。例えば、間にEXCELのマクロなどが介在したりしていないだろうか?。そして、このマクロ担当者が異動して困った事はないだろうか?

本来、製造業の業務には非定型な仕事が多くある。それを忘れてはいけない。

決まりきった仕事の処理をシステム化したものから、徐々に、新しい着眼点を得るために人の判断に頼る事を前提としたシステムの構築に進展してきたからである。当初の機能では不十分で、機能を追加して改造を行ったシステムもある。
 本来、私達の仕事は非定型である。定型であるというものであっても、多くにバリエーションを保有した集合体になっているはずだ。非定型の仕事を自動化するとした場合には、どんな事を考えなければならないだろうか?いきなりAIでとはならない。

DXには緻密な管理レベルを目指したデータの粒度を決めることが必要。

データの粒度は管理を高める力があるならば詳細化されていくだろう。専門と一般では、分野の多さも異なるだろう。多くの分野を扱う企業では分野の階層も独自の体系になる。より緻密な改善を継続する企業のデータ項目は、他社とは異なるだろう。このような異なることが当然な場合に情報システムは一般化した仕様にての開発が困難で、市場にて販売される事は少ない。結局は、企業独自の開発にならざるを得なかった。

デジタルトランスフォーメーションに利用できるデータモデリング

帳票、フォーマット、形式ということを考えないことが必要だ。人の思考に元々は存在しないことであり、創造性の邪魔になるように思えてならない。紙に自由記述しながら、仕事ができるようにならないものかと考えたのである。
 ・QPPモデル
 ・課題ー知識ー判断の関係 これについてはCKWEBにて詳細説明をします。
 ・SQCD
 ・特徴点記述法
を用いて思考や議論のプロセスをデジタル化できると考えて研究を行なっている。
 異なる事業を行う企業間でのクリエイティブな連携をするにしても、既存のデータは当然連携ができない。自由な活動をIT技術で行うならば、何らかのルールは必要であるが、そのルールは、今までにはないものである。ものづくりの隆盛は今後ますます極端な状況になるだろう。その転換に向けて、人の仕事の記録をいかに実現するかを考えてたい。

DXを実現するにはデータ管理とメモの取り方を変更すれば低コストで可能となる。

私のメモの取り方とデータ管理

さて、自分のメモをどのようにとっていたかを紹介し、そこでの問題点をお話ししたい。会社にいた頃はシステム手帳に全てを記録していた。一冊の手帳の中を、仕事のテーマ毎に分け、ラベルを付与してその中を時間軸に追記していた。あとで振り返って何かを思った場合には赤ボールペンで、そのページに追記していた。会社を離れてからは、evernote に同じように仕事のテーマで分類し記録している。これはすでに10年くらいやっている。インターネットの記事もそれを貼り付け、新聞の電子版の記事もevernote に記録している。しかし、PCで自分で作成した文書ファイルをどのように保存するのが良いだろうかと考え、Dropboxに保存を始めた。使い方としては、evernote は会議録と他者の資料。Dropboxは自分や取引関係者の資料と使い分けている。
 このようなことを行なっていると、文書と会議録が分かれてしまい、常にファイル探しをすることになってしまう。これは今でも続いている。これはメールでも同じで、仕事の内容をメールでやりとりすると、その時々の内容はメールに残ってしまう。わざわざテキストにして、Dropboxにおくのは手間である。メールの添付ファイルも問題である。添付ファイルもいつか忘れてしまい、Dropboxのなかを探して途方に暮れたりしている。

メモはイメージデータと一体とすればデータ管理が用意となりDXに役立つ


 人の考えたことには、気づきなどのメモ、テーマに関する文書。作成途中と完成文書がある。インターネットで見たものには記事、動画、写真、などがある。自分のカメラで撮った写真や動画もPCの中にある。これらはまとめると、全ては気づきと見た記事である。これを考えたこととその対象という言い方で抽象化している。
 結局、自分の考えたことの記録と考えた時に見たものが別々になっていることが、大きなストレスになっていると分かった。これらを一体として保存できることが必要だと考えた。KJ法でポストイットに書いて断片的な考えたことと、その整理の結果得られた文書ファイルはバラバラに扱われてしまう。ポストイットは捨てられてしまうことが普通だろう。ポストイット同士の関係性についても、最終の文書ファイルには記録されないことがある。つまり時間をかけて考えたことを、その時だけの必要性だけで破棄しているのである。
 語られたこと、結論に至る論理、ストーリーなどが消えてしまっているのではないかと考えている。写真を見ても、動画を見ても、本を読んでも、その時にあること(対象)に発見や気づきや考えが生まれる。それをその対象に記録することができれば、その時考えたことを思い出すことや続けて考えることができるはずである。これを実現することが知識の蓄積となるからだ。これができることで、作られた文書、インターネットで見た記事などを参考にして、新しい意見や思想やサービスなどを創造的に作り上げていくことのできるi思考環境だと考えている。
そして、これを実現する方式を知識の蓄積方式だと考えている。

これについてはイメージデータの登録方法をお読みください。

ものづくり企業のDXの取組をトヨタの生産技術改革を例にご紹介します。経営者必読です。

DXを進める際にマネージャが推進すべきこと

DXによる業務革新をとIT業界では色々な取組みがされているようです。そもそも、IT技術は人の仕事の生産性向上が目的であると思っています。表面的には企業の売上を高めたいとか、効率的に事業運営を進めたい等の指標が気になること路です。

しかし、企業は人なりと言うように、組織の人々が効率的に仕事ができ、組織の意思決定が迅速に行われることだと考えています。

その為には、先にIT技術がありきではないと言うことも意見としてありますが、IT技術を使い倒して何ができるかという着眼も必要なことだと思います。

トヨタ式で言えば、まず、社内の無駄な仕事を見つけ、廃止すべきだと言うのが先で、ITはそのあとでも良いとの方も社内には見受けられました。

無駄な仕事は組織の中で見つけることが一般的であると思います。ところが、DXの意図は、組織を超え、更には企業を超えた視点での革新的発見にあると思います。

一つの組織だけでは解決することのできない根本的な取組をテーマにする必要があります。そうでなければ、部分的なシステム構築を継続することになり、システムは乱立、非連携のままになってしまうからです。

自分たちで必要な要件を考え、SIerに丸投げしない

しかしながら、残念なことに、日本は、情報システムの企画提案、要件定義までをアウトソーシングの風習に浸ってしまっています。

社内の情報システム部門だけにDXの取組責任を命じても、社内の大きな課題を共有できる段階までまとめあげることは難しくなっているのではないでしょうか。

これは、もう30年くらい、このような取引関係の仕組みに、システムベンダーもその下請け開発企業も浸ってしまっているからです。

IT企業には大小合わせて多くの企業が存在しています。ちょうど、製造業における中小企業が多く存在すると同じような形になっているのです。

今からすべきことは、少しづつでも、DXの企画、仕様を社内の人だけでまとめあげることだと思います。

私がトヨタ自動車にて行ったことや得たこと

私は、生産技術に27年間従事して、自動車組立ラインの設計や工場建設、多くの新モデルチェンジへのラインや工程、設備の新設や改造を経験してきました。

特に、新モデルにおける製品の生産設計を設計部門と協力して進める構造設計の検討にも長く従事したことで、製品設計と生産技術と製造部との仕事の流れを習得することができました。

人の仕事は、それぞれの部門の役割の達成が中心となり、部門間にての性能、品質、コストなどで意見がぶつかりあうことが多くありました。

このぶつかりが製品の開発と生産には大変重要なことだと思っていました。ぶつかり合うことを当たり前の仕事の進め方と社員が理解していることはお互いの不足している思考、技術の明確化と共有化に多いに役立つことになるのです。

自部署の技術不足の認識が次のモデルの為の生産技術的な開発テーマにノミネートすることになります。設計部門にもいつまでに、この生産技術開発を行うのかの旗を掲げ、逆にプレッシャーとして懸命に取り組むことにしていました。

このように、お互いの部門が責任を持って、課題を解決する姿勢は、ぶつかり合う組織間の連帯意識の醸成に役立っていると何回も思ったことがあります。

昔、先輩の1人が、仕事は改善することだとおっしゃっていました。改善することこそが仕事だと言う意味でした。その後、私はぶつかり合うことこそがまず、重要なことだと強く認識するようになりました。それもフラットに。それによって改善のネタが見つけられるからです。

トヨタ生産方式の改善は、まずは、日常管理の中で標準を作り、その標準とズレが発生したときに、すぐに気が付く状態にして置くことが第一歩です。在庫管理においても、置き場の区画線を明確に床に記すことはその為です。

エンジニアの業務の見える化をする為に必要なこと

では、現場のようにものが見える状態ではなく、計画部門の仕事の見える化は何をすべきだと思いますか?

それは、計画部門の仕事を進める際の問題点を見える化することから始まるのではないでしょうか?問題点のない仕事が進んでいるならば、ロボットにいますぐにでも置き換えることができるはずです。

人の意見がぶつかり合うことは、推進上の問題点が存在していることを示しています。問題点にはいろいろなことがあるはずです。S ,Q ,C,Dと言う分類に包含されると思います。

私たち生産技術の各部は、それぞれ、一回のモデルチェンジにおいて、3000件の問題点をバインダーにA4用紙をファイルして、工場と設計部署を毎日のように行き来して仕事をしていました。

この3000件の問題点を全て解決しなければならないのです。更に、その進捗を生産管理部門が全体進行役を担っていました。製品開発と生産側だけで問題解決するだけではなく、調整役としてのこの機能は何社かのコンサルタントを行ってきた経験からも、他の企業にはないものです。

結局、製造現場における問題点は、安全、品質、生産性などに区分され、対策管理のサイクルが回ると同じように、計画部門の考える仕事においても、問題点が管理され、その解決のために、対策進捗が管理される仕組みが作られていました。

コンカレントエンジニアリングが推進されるためには、関係部署における課題や問題点の社内共有が必要で、それぞれの部署の問題点がオープンにされなければ進まないと言う当たり前のことを本当に真剣に取り組んでいたと思います。

人の仕事の品質を高める為のDXをまず先に行うこと

このような実際の業務を行うことにより、誰もが気づくことは、また、社内では同じ問題や同じような問題点が繰り返されていることにあります。それも、対策が不十分であったために繰り返されてしまうのは大問題です。

製品開発と生産側の部門において、このような素直なぶつかり合いを避けているのは、言葉は良くありませんが、隠蔽体質になっていると思うのです。

残念なことに、大手企業の業務のミスが、隠され、何年も経過してからの、隠蔽や指摘された検査や認証、品質問題などが後を立ちません。ISO9001は本当に機能しているのでしょうか?

認定取得しただけで、運用面が疎かになっていては、本質的な目的を見失っていることになってしまいます。私たちの計画業務の仕事は、考える仕事なので、その問題点を消すことも簡単です。しかしながら、実際は対策しなければ、必ず再燃してしまうことを意識すべきです。

このように、人の仕事の品質をまずは確かなことにするための仕組み作りをDXとして捉えることが大事であると思います。問題点の社内共有の仕組みであれば、特殊なIT技術を必要とすることではなく、今日であれば、すぐにでもWebシステムでグローバルな問題点管理の仕組みを立ち上げることができるはずです。

難しいIT技術を採用することがDXではないと思います。これまで、人が属人的に行っている仕事を社内共有することが第一歩だと思います。

私も30年くらいIT開発に携わり、いろいろなシステム提案を行ってきております。その中でも、問題点管理システムは一番重要であるもので、トヨタの中においても、ずっと維持されているシステムになります。

製造業のみなさんが一番心配することは、製品を購入していただくお客様のとこで発生する製品の機能や品質問題だと思います。

このことは企業の経営リスクになる一大事なことだと思います。物事の取組には当然、優先順位を付けなければいけないことが良くあります。売上をあげることとお客様の品質問題解決のどちらかが優先度が高いかは考えるまでもない自明なことです。

しかし、この当たり前の意思決定が、特定の組織の中だけで、問題認識され、優先順位が決定されてしまうと、間違った決定を下すことが良くあります。

人の仕事は、お互いに牽制されなければいけません。組織もお互いに牽制されなければいけません。それは、悪意を持って牽制するのではなく、人は弱いものであり、個人、一組織の責任に任せすぎると、担い切れなくなった時に、弱さが出てしまうことを皆で助けあうために行う牽制です。

ものづくりで、一番重要な機能品質の確保を必死に行うとなれば、当然、製品設計の製品構造に皆の知見を集約し、問題の発生しないための活動や業務が重要視されるはずです。

どんな天才であっても、生産現場の工程能力が守れることと守れないことを知り尽くすことはできないでしょう。したがって、ロバスト設計は大変重要な視点になります。

製品の設計も多くの分担により行われるでしょうし、エンジニアリング企業からの協力も得て行われるようになっています。何十年も設計を経験している人と、そうでない人の差は悲しいくらいの格差が設計図面に現れてきます。

このような避けることのできない実際の問題点を設計部門はどのように解決を行うとしているかが大事です。そして、それが、自組織だけで、解決できるかを良く考えるべきだと思います。

その点で、トヨタの開発段階の業務の活動や仕組みは、多くの関係組織を巻き込み、問題点を共有しなければ、進んで行くことのできない方式になっています。とっても当たり前のことですが、製品設計者は他部署から自身の作成したアイデアや図面に注文をつけられることは嫌がるものです。

しかし、トヨタの仕事は40年くらい前から、この嫌がる方式を当然の仕事のプロセスとして、各部門が認識して進めてきていることが大切なDNAとなっています。

知らないことを教え合う心構えをマネージャは率先垂範すること

教え合う関係により、設計の開発上の悩みや、生産側の困りごとを知り、それを知った上で、新しいモデルチェンジの設計には、その対策を取り入れようとする組織の姿勢はなかなか真似のできない習慣だと思います。

私もそれを何社かに提案指導しましたが、執念を持って進めるマネージャーがいないため、道半ばで諦めてしまうことに遭遇しました。一番の問題は、マネージャーが自身の言葉でその重要性を訴えていないことが多いと言うことです。

マネージャーは異動が多いです。部下たちが、マネージャーの思いをどれだけ受け取っているかですが、それが希薄なんだと思います。

企業の中の組織間の信頼関係は、特にものづくりにおける製品設計部門と生産部門ではとても重要なことです。これらが醸成されていない企業の製品は不安だと思うのは私だけではないはずです。

問題点管理システムの他に、考えるべきことは、設計部門と生産部門の間でのデザインレビューの進め方です。

ある企業では原価見積もりが決まったのちにデザインレビューを行っていました。おかしなことです。機能品質の設計構想が定まってから、原価見積もりすべきで、設計構想の段階からものづくりの意見を取り入れなければいけないのです。

企業風土・倫理観の改革(DX)はマネージャの仕事

このようなおかしなことに気づきならがも、手を打てないことこそ根本的な問題点なのです。感性のある人材が不足していることも要因でしょう。

しかし、長年、根本的な問題を解決できていないことは、人材育成が不十分であり、マネージメントの能力も怪しいと言わざるを得ません。

企業の中に存在している個別の問題点を束ねて、根本原因に行き着く活動、風土を作り上げなければいけないのです。

このような風土の企業は、製造現場の品質不良が多く、ラインストップも日常化しています。そして、このような問題点は解決されることなく、製品を手直しして出荷しています。

改善活動は形式化しており、本質対策までやり抜く文化が欠如して行きます。

結果的に在庫が増え、逆に欠品が発生し、相乗効果で、在庫が積み上がります。その在庫を減らすために、見た目で目立たない場所に分散配置して隠すことで問題から逃げようとすることをしてしまうのです。

製品開発に話を戻すと、図面検討プロセスを細分化して、何を検討するのかまで明確にすることが必要です。その検討が行えるためには、製品開発部門は、予定通り、検討に値する図面を作成しなければなりません。

時間がない、工数がないからと言って、安易に検討プロセスをスキップしたり、日程を遅らせることはご法度です。そのくらいに、日程の決め方も根拠を持って開発と生産とで合意しながらプロセスを決めることが必要です。

DXをやるには、その前に、このようにやるべきことが多くあります。それを考えること無く、ITツールを導入してもお金の無駄遣いになるだけです。企業の情報化投資が効果が見えないと言われている場合、ほとんどが、システムやツールやデバイスの購入だけの仕事をしているからに他なりません。